2013年8月23日金曜日

『スター・トレック イントゥ・ダークネスを観てきた』


 「スター・トレック イントゥ・ダークネス」を観てきた。大抵の場合、続編は面白さが半減する(ターミネーター2など例外もあるが)と言われるが今回の作品は十分に楽しむことができた。

 
 ベネディクト・カンバーバッチ演じるジョン・ハリソンは遺伝子操作をされた超人類。


 結局こいつは悪いやつなのだが、こいつを利用してクリンゴン帝国と惑星連邦間の戦争を望む軍人がいるわけ。


 その軍人を演じているのが映画「ロボコップ」で有名なピーター・ウェラー。




 こいつが裏でいろいろ悪巧みをしていたのだが、超人類であるハリソンは最終的に軍人を殺害する。

骨の砕ける音が痛い。

 ハリソンは一時的にカーク船長やスポックと協力するも結局こいつは「悪者」でしかない。


 最初、難病で治療困難な子どもを持つ親に近寄って「自分なら子どもを治療することができる」と言って自分の血、どんな病気も治すことができる「超人血清」を父親に渡す。子どもはその血清によって回復するも、その代償はあまりに大きいものとなる。


 ハリソンは父に血清を渡すかわりに「自爆テロ」を要求するわけ。


 この映画を見ていると、9.11同時多発テロ後のアメリカ、イラク、アフガン戦争を経験しているアメリカの現実の社会情勢をうまく作品に反映させているように思える。


 9.11同時多発テロ後の世界観を反映させているアメリカ映画自体は決して珍しくない。
 スター・トレックに出てくる人物はほとんどが「軍人」であり、社会構造も差別や貧困が存在せず、ほとんどの疾病が治療可能である理想的な社会が建設されているが依然として「軍隊」が存在する社会がスター・トレックの世界なのである。

 遥か先の未来の地球を描いているが「軍隊」だけは300年経ても無くすことはできず、また戦う事自体は「野蛮」なものという認識はないようだ。
 もちろん、地球人のほとんどは「平和」を望んでいるだろうし、その重要性を十分認識しているだろうが、「軍隊」が残されている理由として、宇宙という未知のフロンティアを開拓していく上で接触した他の知的生命体との「戦争」に備えて、生存権の確保、防衛をしていくため最小限度の軍隊の保有が必要だということを国民も十分理解している状態があり「軍隊」が存在するのだろう。
 
 劇中に登場するクリンゴン帝国の兵士はカッコイイね。

 マスクを装着しているのが非常に興味深い。TVドラマで描かれているクリンゴン人は昔の「日本人」、「サムライ」をモデルにしてると言われている。礼儀を重んじる姿勢、忠義の心、いくさによって磨かれてゆくアイデンティティ。今回の映画では出演シーンは少ないので詳細にはクリンゴン人を描いてはいない。
 しかし、装着しているマスクや戦闘服を見ていると日本のサムライが使用していた甲冑をモデルにしているのではと思う。

 スター・トレックはあらゆる民族、人種が混在している。アメリカ人、ロシア人、イギリス人、アジア系もいれば黒人もおり、多様性を尊重する精神はスター・トレック誕生から半世紀以上経過した今もなお失われることはない。SFで描かれてきた理想社会に、現在の我々が住んでいる世界、多様性という面ではアメリカ社会そのものがこのスター・トレックの世界観に一歩ずつ近づいていると言って過言ではないだろう。






 宇宙戦艦がサンフランシスコにある艦隊司令部に「カミカゼアタック」を仕掛けるシーンはニューヨークへの世界貿易センタービルへの攻撃を彷彿とさせるものがある。


 このジョン・ハリソン(カーン)は中東、アジア地域に独裁帝国を築いたという設定である。


 これはあきらかにイランやフセイン政権下であったイラク、あるいは現在アメリカにとって脅威となりつつある中国など、アメリカにとっての「悪」を体現した存在であると考える事ができる。




 こういった現実の社会で起きていることを上手く映画に反映させているのは流石だと思う。




 トンガリ耳の持ち主であるスポックの得意技である「バルカン鷲掴み」(バルカン人の特殊能力で首の付け根をつかむと相手は身動きができなくなる)も効果がないほど強靭な身体を持つカーン、カーク船長が全力で殴っても平気なカーン、これだけ強くそして狡猾な頭脳を持つカーンは最終的に呆気なく倒されて再び冷凍睡眠で寝かされて終わり。もう少し抵抗してもよいのではと思う。ここは消化不良ぎみである。


 カーク船長が宇宙戦艦のエンジンを稼働させるために原子炉内に入ってキックを連発するシーンは映画を見終わった後、
 「いや、原子炉にキックはマズイよな」
と思った。(動力源は核融合の可能性もあるが詳しくは知らない)
 とにかくカーク船長の命をかけた行動によって乗組員たちは救われたわけだが、カーク船長は大量の放射能を浴びてしまったため死んでしまう。ところが、


カーク船長は「死にません」
カーンの「超人血清」によって蘇る(笑)


 ここは映画の「お約束」のようなもの。子どもも観る映画なので急性放射線障害の症状をスクリーンに映し出す訳にはいきません。



 映画の締めくくりはカーク船長によるあの「お約束の言葉」である。


 この間観た「ワールドウォーZ」よりも面白かったな。


 今回のスター・トレックは十分見応えのある完成度の高い作品となっている。まだ観てない人は是非観た方がよい。前作をDVDあるいはブルーレイでレンタル、購入してチェックしてから今回の作品を観てみると面白さが2倍、3倍になるかもしれない。


 「マン・オブ・スティール」という超大作も控えてるがこちらも映画館で観終わったらこのブログに感想などいろいろ書こうと思う。








2013年8月19日月曜日

『戦史叢書』

「戦史叢書」をちゃんと読もうと思う今日このごろ。


この本は大きな図書館など所蔵されている。古書店でも取り扱われているが発行部数が少ないのでかなり希少本であるため価格も高い。


軍事、第二次世界大戦などの戦史などに興味を持っている方はこの本を読んだ人も少ないはずだ。


私も軍事に感心があるので関係する本を集中的に読んでいた時期がある。


今年は暑い「8月」だ。日本人が体験した大戦争の終結、敗戦から68年が経過し、過酷な生活を余儀なくされた将兵、一般市民などの多くは亡くなり、現在生存している方の高齢化が深刻な問題である。


その時代の「証人」の数が今後減少していく中で「戦争」をどう若い世代に語り継いでいくべきなのか、重要な問題である。



人々は繁栄と平和の日々をおくっているが、私たちの現在の生活は多くの犠牲を払って成立していることを忘れてはならない。


平和は何の努力なくして実現されるものではない。


日本が再び大きな犠牲と代償を払うまえに、政治に関心を持ち、国民一人ひとりの「不断の努力」がこれからますます重要になってくるだろう。


残念ながら周辺各国の状況を見るとお世辞にも良い環境にあるとは言えない。


核問題、軍備拡張など日本を取り巻く周辺各国の状況を見ると、現在の日本が有事の際迅速な対応ができるかどうか不明である。


日本国だけが世界に高らかに「平和国家」であることを宣言しても、現実世界では「平和」とは程遠い世界が我々の眼前に広がっている。


日本にアメリカ海兵隊のような機能を持った水陸両用部隊を設置する計画がいよいよ現実味を帯びてきた。


日本の島嶼防衛を念頭においた今回の政治的決断。私の個人的な考えは少し遅いのではと思いつつも、少しずつではあるが日本が国民の生命と財産を守るために必要な最小限度の軍事的機能を持ち始めたことは決して悪いことではない。


ただし、日本が「戦える軍隊」を持った時、それはあくまでも「自衛」のためのものであり、アメリカの「傭兵」として知らない国で若者が死んでいくのは見たくない。それは非常に難しい政治、外交の努力が必要になってくるだろう。


これから私たちは日本がどのような道を歩んでゆくのかを見届けるとともに、未来の良き社会を作っていく担い手として責任ある行動が求められる。


2013年8月13日火曜日

『映画 イースタン・プロミス、ロシアンマフィア、麻薬』



かなり前になるが「イースタン・プロミス」という映画を観た。


この映画はロシアンマフィア、人身売買などかなりキワドイものを題材にしているためこのような(性、暴力描写がある)映画に耐性を持っていない方にはおすすめはしない。


もう観た方はこの映画をどう評価するだろうか。私ははじめてこの映画を観た時「なんで映倫はR−18指定にしたのか?」と疑問に思った。主役のヴィゴ・モーテンセンの陰茎がサウナでの格闘シーンで見えているのが原因なのか(冗談)


観た当時は正直この映画に関して深く考えることはなかった。何かしらのメッセージは勿論あるのだろうが、当時(現在の私も理解しきっていない)は全くと言っていいほどよくわからない映画だなというのが率直な感想である。


映画の話と並行して現実の世界「ロシア」で起きていること。


それは若年貧困層で急速に薬物、麻薬や覚せい剤などが広まっている問題である。


この薬物の問題は今に始まったことではないが、新しい薬物、ドラッグのマーケットとしてロシアは現在でも非常に大きなものである。(中国など新しい市場もあるが)


「黄金の三日月」と呼ばれるエリア、イラン、アフガニスタン、パキスタンがその対象であるがそれらの地域から流入してきており、カザフスタン国境付近で麻薬売買が行われてる。国境警備隊がいても広大な国土を持つロシアである。取り締まりにも限界があるのだろう。


ソ連崩壊後、政治、経済において深刻なダメージをを受けたロシア。国民は困窮生活を強いられて、辛い現実から逃避する手段としてウォッカなどのアルコール、麻薬、覚せい剤などを使用してしまう。


広大な国土は中央集権的、且つ独裁国家を形成しやすい土壌を持っているため、現在プーチンが「独裁者」のごとく民主主義政治を無視した政治を行なっている。


長期政権は政治の腐敗を招く。汚職の蔓延、マイノリティに対する暴行、殺害などは日常茶飯事であり、モスクワなど大都市だけでなく、中央から遠く離れた地域ではその質・量ともに都市部とは桁違いのものになる。


警察や役人の腐敗は凄まじく、またその力が及んでいない場所においてはタイトルにも書いたが、「ロシアンマフィア」といわれる暴力組織が地域運営をしている現状がある。


日本でもこのようなアンダーグラウンドな場所はあるが、ロシアと比較した場合、その規模、人口などは比べ物にならない。このようなマフィアの主な資金源といえば麻薬取引売買が挙げられる。ヘロインなど強い依存性と人体への悪影響を持った薬物だけでなく、新しい薬物が広まっている。

名前は「クロコディル」。阿片の3倍強力でヘロインの10分の1という低価格で入手することが可能であり、また主成分が比較的容易に入手することが出来るので自分で合成する者も多いという。「クロコディル」は当然ながら人体への悪影響は甚大なものであり、皮膚、筋肉、骨、脳などが壊死していくが、本人は薬物の強力な鎮痛作用によって気づくことなく身も心もボロボロになって死んでいく恐ろしい薬物である。

YouTubeにこのクロコディルがどのように若者の間で蔓延しているか、そしてその背景について詳しく紹介している動画があるので見てもらいたい。


最後にクロコディルが蔓延しているロシアの社会は問題であること、政府の管轄下に置かれていない地域におけるマフィアの影響力は絶大なものであることに触れておく。映画はロシアンマフィアの一部の面しか描いてないが、現実のロシアではマフィアと政府が密接につながっており、良い意味でも悪い意味でもこのマフィアがアウトサイダーたちの受け皿になっていること、そしていつの時代、どの地域においても弱いものは強いものから「搾取」されることを頭の片隅に入れておくべきだろう。ロシア社会とマフィアのつながりを映画を通じて見るならば「イースタン・プロミス」は良い作品である。